セキュリティ・コラム 法規制

個人情報保護法と番号法
正しく理解する用語の定義と管理の責任

法令遵守は、正しい用語の理解から始まります。
「情報の重み」に応じた管理体制を整え、組織の信頼を守りましょう。

1. 知っておくべき「重要用語」の定義

個人情報

特定の個人を識別できる情報(氏名、生年月日等)。他の情報と容易に照合して識別できるものも含まれます。

個人識別符号

それ単体で個人を識別できる符号(指紋、顔認証、免許証番号、マイナンバー等)。

要配慮個人情報

病歴、信条など。差別を招く恐れがあるため取得に同意必須。オプトアウト提供不可。

個人情報データベース等

体系的に構成された情報の集合(Excel、五十音順の名刺入れ、顧客管理システム等)。

個人データ

データベース等を構成する個人情報。漏洩報告や安全管理義務の主な対象です。

保有個人データ

開示や訂正の権限を持つデータ。本人からの請求対応の対象となります。

個人情報取扱事業者とは?

データベース等を事業に供している者のこと。現在の日本ではほぼすべての法人が義務を負います。

2. 「情報の重み」に応じた管理体制

Level 3

マイナンバー(特定個人情報)

番号法により用途が限定。本人の同意があっても目的外利用は不可。

Level 2

要配慮個人情報

病歴・犯罪歴など。漏洩時の不利益が大きいため、より慎重な管理が必要。

Level 1

個人データ(一般的な個人情報)

氏名・住所など。適切な管理が求められる基盤の情報。

Weight of Management & Risk

管理のポイント

「全部同じ個人情報」と考えるのではなく、
「このデータにはLevelいくつが含まれているか?」
を常に意識しましょう。

Levelが高いほど、鍵のかかる場所に保管する、アクセス権限を最小限にするなど、対策の強度が一段階ずつ上がる必要があります。

3. 管理策の違い(情報のLevel別比較)

対策の区分 【Level 1】
一般的な個人情報
【Level 2】
要配慮個人情報
【Level 3】
マイナンバー(番号法)
組織的管理策
・全従業員が目的範囲内で取扱可能。
・基本的な報告体制。
・取得時に明示的な同意を確認。
・閲覧権限の適切な制限。
事務取扱担当者を限定。
・利用履歴の証跡(ログ)保存と定期点検を徹底。
物理的管理策
・書類の放置禁止。
・施錠可能な什器で保管。
・保管場所のより厳格な施錠。
・画面ののぞき見防止措置。
・仕切り等による管理区域の設定。
・専用金庫、持出不可PCの使用。
漏洩時の対応
・重大事態(1,000件超等)で委員会報告義務。 1件でも委員会への報告・本人通知が原則義務。 ・特定個人情報ファイルの重大漏洩において、より厳格な即報告義務。

4. 守るべき基本動作

① 利用目的:何のために使うか

目的を明確にし、本人に通知。決めた目的以外には使いません。

② 安全管理:漏らさない仕組み

情報の階層(Level)に合わせて、安全な場所に保管します。

③ 提供制限:無断で渡さない

原則同意なく第三者へ渡しません。Lv3は法律外の提供は不可。

④ 対応:開示請求への対応

本人からの「データを見せて・直して」という声には誠実に応じます。

たとえ話で理解する「情報の預かり」

個人情報の取扱いは、「友人から、非常に高価で壊れやすい大切な宝物を預かること」に似ています。

Level 1(名前など)が「大切に扱ってね」と言われた宝物なら、Level 2(病歴など)は「絶対に見せないで」と念を押された秘密。そしてLevel 3(マイナンバー)は、「金庫に入れて、定められた手続き以外では絶対に取り出すな」という法律の厳命がある預かり物です。

預かり物の「重さ」が変われば、かける鍵の数も、扱う場所も、関わる人数も変えなければならない。私たちは常にこの意識を持って実務に向き合いましょう。